【読書】アートの影響力を目の当たりにする『暗幕のゲルニカ』

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芸術に縁のない人でも、ピカソゲルニカは歴史の授業で使われる資料集等で一度は見たことがあるのではないでしょう。

 

本作「暗幕のゲルニカ」はピカソによって1937年に描かれたゲルニカを中心にストーリーが進むアートミステリーです。2016年直木賞候補作としても注目されました。

 

暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ

 

Amazonからあらすじを引用 

反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。

国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した――誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか?現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。

 

本作は現代と過去の2パートが交互に進行していきます。

現代の21世紀パートは2001年のNYから。西暦と場所でピンとくる方も多いでしょう。この事件を受け2003年に国連本部でイラク空爆を決定する演説をした際、本来であれば演説者の後ろにゲルニカタペストリーが映し出されるはずでしたが、そこには青いカーテンと各国の国旗で隠されるように覆われた状態のゲルニカが映っていたそう。作中ではゲルニカが黒い暗幕で隠されていることになっていました。ここから物語は一気に加速していきます。

 

過去の20世紀パートは1937年、パリにあるピカソのアトリエから。

パリ万国博覧会のスペイン館のために、壁を埋めつくすほど巨大な新作を描くことになっていたピカソ。アトリエに届けられたキャンバスは、約350センチ×780センチ。何を描くべきか悩んでいたピカソであったが、ある日の朝刊で故郷スペインのゲルニカ空爆されたことを知る…

こちらも歴史の授業で習った記憶が→ゲルニカ爆撃 - Wikipedia

 

イラクへの空爆ゲルニカ空爆

現代と過去、人間の暴力とピカソゲルニカが物語の軸として、時代を行き来しストーリーが進行していきます。

 

著者である原田マハさん曰く、史実1割フィクション9割で書き上げられた本作。

芸術に疎いわたしはその境目がちっともわかりませんが、ゲルニカを通じてピカソが掲げた反戦と平和への強いメッセージは少し理解できたような気がします。現に幕で覆い隠さないといけないくらい強いメッセージを秘めている(テーマがピンポイントすぎることも要因でしょうが)ということですね。

 

ちなみに…

ピカソゲルニカですが、スペインはマドリッドにあるソフィア王妃芸術センターに常設展示されており、貸出は一切していないそうです。かつてはMOMAに展示されていましたが、1981年にスペインへ戻され、現在に至っているそう。

 

スペインに行かないと本物のゲルニカを見ることができませんが、二次大戦後にレプリカとなるタペストリーが3つ作成されており、そのうちの一つがニューヨークにある国際連合本部の国際連合安全保障理事会議場前に展示されています。本作でもストーリーの起点となったレプリカです。

 

ここ日本でもゲルニカの実物大レプリカが鑑賞できる場所が2か所あり、日本の徳島県鳴門市にある大塚国際美術館と、東京駅近くにある丸の内オアゾのエントランスに精工な原寸大レプリカが飾られているそう。大塚国際美術館は日本で1番入館料が高い(3,240円)美術館としても有名だそうで、四国へ旅した際は足を運んでみたいものです。

大塚国際美術館|徳島県鳴門市にある陶板名画美術館

 

原田マハさんの作品は3作目。個人的に結構好きなアートミステリー。

専門性が高いジャンルなだけに多くの作品があるわけではありませんが、今後もこのジャンルが活気づくために期待しています。