【読書】憎悪の正体は何処に?『憎悪のパレード 池袋ウエストゲートパークXI』

 

懐かしさを感じる池袋ウエストゲートパークシリーズ第11弾。

その当時は池袋なんか行ったことないのに、小中学生の頃にドラマ版を見てIWGPに熱中していたのを覚えています。軽い黒歴史…。

 

去年くらいからちょくちょく読み直しており、ようやく最新シリーズまでたどり着きました。第12弾『西一番街ブラックバイト』が既に刊行されているので、近いうちにそれも読んでみたいと思います。

 

本作は4編収録の短編集。

脱法ハーブパチンコ中毒ノマドワーカーレイシストと時事問題を題材とした、さくっと読める内容です。内容が軽すぎて不満もありますが、短編なんで仕方ないかなーと今後の長編に期待したいところ。そういえば、表題となっている『憎悪のパレード』はレイシスト、差別主義者にまつわる話しですが、今年はアメリカの大統領選挙でこの側面も頻繁にニュースにあがりました。当事者ではないため気にも留めませんでしたが、実際に言われる側・関係ないけど聞かされる側の人間にしてみたらたまったものではない事態ですね。都内の駅前で街宣車をよく見かけますが、アレは本当にヒドイ。

 

本作読了後にAmazonレビューを見ると、最近のIWGPは「事件発生」→「マコトとキングで問題解決」という定型化した流れを「水戸黄門」的であると揶揄し、当時の輝きが失われてしまったーと嘆いている読者もいるみたいです。たしかに、その時勢に沿った問題を取り上げていますが一つ一つの内容が浅く、わたしもこれらを読んで心に響くものがありません。それに加えて、作者である石田衣良さんが現在56歳と言うことで、若者である主人公マコト目線で書く文書に「違和感が全くない」と言うと嘘になります。

 

しかし、パターン化している水戸黄門を楽しみにしている層も確実にいるわけで(水戸黄門を見たことがないから知りませんが…)、わたしなんかは、懐かしき中二病を患っていたころの感覚で今もこのシリーズを楽しむことができます。そういう意味では、本シリーズに登場するマコトやGボーイズのキング、トラブルに巻き込まれる幼い子供たちを見ていると、自分が若者でなくなった今、昔は誰もが内に秘めていたであろうやり場のない燻った感覚?みたいなものを本シリーズは思い出させてくれる、カンフル剤みたいなものですかね。

 

刊行ペースがだいぶ落ち着いてきましたが、27歳となったおっさん(若者からすれば年上の男性はみんなおっさん!!)でもまだまだ楽しむことができる1冊です。