【読書】蔓延する否認という病『インフェルノ ヴィジュアル愛蔵版』

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ダン・ブラウン著の「ロバート・ラングドン」シリーズ第4作目『インフェルノ』を読みました。昨年10月には映画も公開され、何かとホットな一冊です。

インフェルノ ヴィジュアル愛蔵版

インフェルノ ヴィジュアル愛蔵版

 

 

あらすじ

病院で目覚めたラングドン教授は、窓の外の眺めから、イタリア中部の都市フィレンツェにいることに気づく。しかし頭部の傷や、自分が病院のベッドにいる理由を思い出すことはできなかった。直後、担当医師が襲撃されるところを目撃したラングドンは、女性医師シエナブルックスの手引きで命からがら病院を脱出した。何者かがラングドンを探し出そうとしているのだ。シエナは彼の上着の隠しポケットから高性能バイオチューブを発見。内部に埋め込まれたプロジェクターが壁に映し出したのは、ダンテ『神曲』“地獄篇”へのオマージュとして捧げられた、ボッティチェルリの『地獄の見取り図』。そこには原画にはない暗号が描きこまれていた。謎を探求するうち、ラングドンフィレンツェの象徴ともいうべきヴェッキオ宮殿にたどり着き、美術館の展示室からダンテのデスマスクが盗まれたことを知る。美術界の重鎮が命がけで託した手がかりを頼りに、ラングドンは消えたマスクの行方を追うが―

 

主人公のラングドンが軽度の記憶喪失状態から始まる本作。

失った記憶のパズルを埋めていくように展開していく序盤は、読者もやきもきしながら「この先どうなるの!?」、「状況が全く読み込めない!」という風に、ラングドンに追従してフィレンツェの街中を駆け回るソワソワ感が楽しめます。

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徐々に記憶を取り戻していくうち、世界中を火で焼きつくすようなバイオテロの危機がせまっていたことを思い出すラングドン

 

世界的な謎の組織「大機構」に命を狙われながらも、バイオテロを阻止すべく必死にダンテ『神曲 地獄篇』にまつわる謎を解き明かしていきます。

 

毎度のことですが、歴史的建造物や絵画にまつわる謎を紐解いていく痛快さはもちろんのこと、本作も後半に大どんでん返しが待ち受けていますが、そちらは読んでからのお楽しみということで。

 

ヴィジュアル愛蔵版を読もう!

これから『インフェルノ』を読んでみようと思っている方には、是非「ヴィジュアル愛蔵版」をオススメします。

インフェルノ ヴィジュアル愛蔵版

インフェルノ ヴィジュアル愛蔵版

 

 

作中に出てくる建造物や絵画、街中の風景など数百点におよぶ写真が本文中に掲載されており、より深くロバートラングドンシリーズを理解するための手助けとなるはずです。

 

単行本で購入すると1冊5,000円以上するため、わたしは図書館で借りて読みましたが、このヴィジュアル愛蔵版は装丁も非常にこだわったデザインで、本棚に並べておくだけでも十分にその価値はあるかと思います。

 

なぜか前作『ロスト・シンボル』は用意されていませんが、1作目『天使と悪魔』、2作目『ダ・ヴィンチ・コード』にはヴィジュアル愛蔵版があるため、文庫版ではなくそちらを手に取ってみてください。

天使と悪魔―ヴィジュアル愛蔵版

天使と悪魔―ヴィジュアル愛蔵版

 
ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版

 

  

作中、『神曲 地獄篇』の「地獄の最も暗きところは、倫理の危機にあっても中立を標榜する者たちのために用意されている。」という文言が何度か出てきますが、ストーリーの最後の最後でようやくこの意味を理解するに至りました。

 

エピローグの機内でラングドンが「世界が置かれた状況に対しても、否認という病が蔓延している…」と回想するシーンでは、何かと「否認」を使ってプライベートやビジネスの大小さまざまな問題を後回しにしている自分に嫌気がさしつつ、そういった差し迫った事実に目をそむけずに立ち向かう勇気がいつの時代も必要とされているのだなーと身につまされる思いになった一冊です。