【読書】リスベットが帰ってきた!『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 上・下』

前作を読んだのが2016年4月。間が空きましたが、ようやく2015年末に発売された最新作「ミレニアム4」を読みました。

 

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)

 
ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)

 

 

原作者であるスティーグ・ラーソンは「ミレニアムシリーズ」を第5部まで構想していましたが、第4部の途中まで書き上げた段階で心臓発作によって他界。その後、世界中で大ヒットする自作を見ることなくこの世を去ってしまったのです。そのため、本作「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」からは代筆者であるダヴィド・ラーゲルクランツが執筆しています。

 

ちなみに、古いロイター記事によると、本年2017年に第5部が、2019年に第6部が出る予定らしいです。実に待ち遠しい!!

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上巻のあらすじ

雑誌『ミレニアム』を発行するミカエルたちの会社は経営危機に陥り、株式の30パーセントを大手メディア企業のセルネル社に売り渡していた。ミカエルにも優れた記事がなく、時代遅れの記者との避難にさらされていた。そんな彼のもとに、ある男から大スクープになるという情報が持ち込まれる。人工知能研究の世界的権威であるバルデル教授が何か大きな問題を抱えているようなので、会ってほしいというのだ。男の話からリスベットが関係していると確信したミカエルは、彼女に連絡を取ろうと試みる。一方、アメリカのNSA国家安全保障局)は、産業スパイ活動を行なう犯罪組織の関連会社からバルデルが革命的な研究成果を持ち出したため、彼の身に危険が迫っているとの情報を得る。折しも、鉄壁の防御を誇るNSAのネットワークに何者かが侵入した!

 

シリーズの途中で「作者が変わる」という一大事があったため、読む前は「前作までに築き上げてきたミレニアムの世界感が崩れていたらどうしようか…」と不安感いっぱいの中で読み始めましたが、それも杞憂でした。

 

(前作を読んでから10カ月以上経っているというブランクの影響もあると思いますが)作者が変わったことによる物語への影響について、なんら違和感を覚えることはありませんでした。つまり、個人的には「今までのミレニアムと一緒だよー」と声を大にして伝えたい。天才ハッカーであるリスベットは相も変わらず堅物だし、雑誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルも変わらずミカエル、である。

 

前作までと比べると作中で取り扱う事件の内容がやや薄いように感じられるが、本作1番の功績は、ストーリー以前の大問題である「作者が代わってしまった」という大きな悲劇を難なく飛び越え、新たな「ミレニアムシリーズ」として非常にいいスタートを切ることができたことだと思います。これまでのシリーズを通して原作者が伝えてきた「女性への蔑視や暴力」といったイズムは、本作にもきちんと継承されており、そういった巨悪に立ち向かうリスベット達の姿は健在です。

 

次回作への布石もところどころに散りばめられており、今年発売される第5部への期待がものすごく高まりました。今のところ、2017年1番の楽しみは「ミレニアム5」の発売です。