【読書】静寂を探求する『沈黙すればするほど人は豊かになる ラ・グランド・シャルトルーズ修道院の奇跡』

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本書は、フランスの山中にたたずむ「ラ・グランド・シャルトルーズ修道院」に焦点を当てた、ガイドブック的な一冊。

 

いかにも「自己啓発本デス!!」ってタイトルですが、期待しないほうが吉です。わたしが期待していた「豊かになる」具体的な方法はちっとも記載がなく、タイトルに騙された形となりました…。しかし、「グランド・シャルトルーズ修道院」のような神秘的な世界もあるんだ!ということでご紹介。

 

「ラ・グランド・シャルトルーズ修道院」とは何ぞや?ということでフランス観光の公式HPから一部を抜粋してみます。

静謐な佇まいのグランド・シャルトルーズ修道院はカルトジオ会修道院の総本山。900年前に建てられた修道院では現在も、社会と隔絶した静寂の中、30人ほどの修道士たちが沈黙と瞑想と祈りに捧げる生活を送っています。

出典:フランス観光開発機構HPより http://jp.france.fr/ja/discover/67639

 

お酒が好きな方はリキュール「シャルトリューズ」で、猫が好きな方は品種「シャルトリュー」という単語で馴染みがあるかもしれない「グランド・シャルトルーズ修道院」ですが、かつては外部への情報公開が一切されておらず、修道院での生活の様子もベールに隠されていました。

 

映画『大いなる沈黙へ』オフィシャルサイト

ところが、2005年に公開された映画『大いなる沈黙へ』によって修道院の内部の様子やそこで厳しい修行を行う修道士たちの様子が知られるようになってきました。ちなみに、この『大いなる沈黙へ』という映画ですが日本では2014年に公開され、字幕もナレーションも音楽も一切ないドキュメンタリーとして話題にもなったそうです。観てみたいけど、高い…。

 

「グランド・シャルトルーズ修道院」で生活する修道士たちは1日に9時間も祈りをささげ、日曜祝祭日以外は他人と会話をほとんど交わさないという環境で生活しているそう。与えられた個室で祈祷や読書などをしてひっそりと暮らしているらしい。

何かとつながりを求めるSNS世代の現代人からするととても信じられない環境ですが、映像を見る限り、修道士たちの表情からは「辛い」や「苦しい」といった負の要素は感じられず、「幸せ」に満ち足りた生活を送っているようだと筆者は語っています。

個人的には修道士たちの「幸せ」や「豊か」な状態へ至るまでの肉体的/精神的な昇華プロセスを知りたくて読みはじめたのですが、肝心のその部分については記述がほとんどないというお粗末な本書。これ以上被害者を出さないためにも、一刻も早く改題を願いたい…。

 

修道院の歴史と概要説明、筆者のちょっとした訪問記が入り混じったテイストが終始繰り広げられ、途中でさじを投げようかとも思いましたが、一般人が普段は知りようのない「修道院」やそこで暮らす「修道士」の姿を垣間見ることができる貴重な一冊でした。