『数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学』を読みました

 

数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学

数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学

 

2016年28冊目。

 

大人のみなさんに質問です。

なぜ(-1)×(-1)=1になるのか、もし子供に聞かれたときに説明できますか?

 

恥ずかしながら、わたしは「ルールでそうなっているんだよ汗汗汗」としか説明できません。こんな理由じゃ納得してくれませんね。

負の計算は中学1年で習う内容。1」という解を導き出すことは容易ですが、上記のように「なぜ」そのようになるのか、数学の基本原理を用いた説明を求められると答えることが出来ない方が多いのではないでしょうか。

 

こういった数学に関する「なぜ」や雑学をやさしく教えてくれるのが本書。著者である大栗博司さんが高校生になる娘に語りかけるテイストで書かれており、数学が苦手な方でも入り込みやすい内容となっています。

 

数学を学ぶ意味とは? 

 

学生時代にアルバイトで塾講師をしていましたが、数学が極端に苦手な生徒が一度は口にするセリフがあります。それは「数学は役に立たないから勉強する意味がない」ということ。わたしも数学が苦手科目だった時期にそう思っていたことがありました。これに対し、著者は数学は一種の「言語」であり、言葉を学ぶという側面からも学ぶ意義があると説いています。

『役に立たない数学』も勉強する価値がある。数学には、言葉を学ぶという側面があるからだ

 

ときに、数学は純粋な言語より明確に事象を表現することが出来るツールだとも書かれていました。統計学などがその典型ですね。この本の後に、たまたま統計に関する本を読みましたがそれを痛感しました。

数学とは、英語や日本語では表すことができないくらい正確に、物事を表現するために作られた言語だ

 

上記したように「数学を学ぶ=言語を学ぶ」という側面もありますが、そもそもの大切なことは人類の英知に触れることができる喜びなんですね。スケールが大きすぎて実感があまり湧きませんが、数学の歴史を学ぶと少しですが理解できます。

数千年にわたる数学者の努力の跡をたどることは、人類の知の素晴らしさに触れるまたとない機会なので、大切にしてほしいと思う

 

難しい公式がバンバン出てこないので数学が苦手な方でも、さくさく読むことが出来ます。また、章によっては中学生でも十分に理解できるよう噛み砕いた説明となっていますので、勉強していて数学に行き詰ったとき、子供に数学の楽しさを伝えるとき、新たな知的好奇心を刺激してくれるヒントがたくさんある一冊です。

 

 

国際的に見た数学とは…

ここからは蛇足ですが、「数学を学ぶ」という国際的な解釈は本書のあとがきに以下のように書かれていました。

経済協力開発機構OECDが行っている15歳児の学習到達度の国際調査PISAでも、「数学的リテラシー」とは、「個人が世界において数学が果たす役割を認識し、建設的で積極的、思慮深い市民に必要な確固たる基礎に基づく判断と決定を下す助けとなるもの」として定義されています

 

日本の教育では生徒を文系と理系に分け、あたかも「文系に数学は不要」だとか、「理系は歴史を学ぶ必要があまりない」といったカリキュラムが組まれています。特に私大を第1志望とする高校生なんかは、高3になると所謂「捨て科目」が出てくるのではないでしょうか。

 

短期的な視点で日本の大学入試を突破する上では有効な手段かもしれませんが、長期的視点で考え、グローバル化していくビジネスシーンで活躍していく人材という点では、「リベラルアーツ」が必須なんです。わたしが学生の頃にこういったことを教えてくれる方がいなかった(もしくは、わたしが聞いていなかった)ので、少なくとも自分の子供たちには自ら道を狭めてしまうような選択は避けてもらいたいと思う今日この頃。