原田マハさんの作品。
以前に『楽園のカンヴァス』を読み、その作風と芸術に関する造詣の深さにとても感動しました。本作は2013年に直木賞候補に挙がった短編集です。
わたし自身、昔から芸術とは縁のない(=センスがない)生活を送っており、27年間の中で自慢できることは「幼稚園の頃に描いた鳥の絵でコンクールに入賞したこと」くらい。そういうこともあり、芸術に関する書籍は、ダン・ブラウンの『天使と悪魔』でお馴染み<ロバート・ラングドン>シリーズしか読んだことがありませんでした。
なので、本作に描かれているマティス、ピカソ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、モネや彼らの代表的な作品も、歴史の資料集とかで見聞きしたことあるなー程度の知識です。
芸術に疎いため本作を十分に理解できたとは言えませんが、彼らの文字通り「人生をかけて描いた作品」に関する4つのエピソードは、フィクションであるということを差し引いても、心に響くものがありました。
印象派ゆえの世間からの嫌悪、経済的困窮、複雑な人間関係などなど。
これらの問題は昔に限ったことではなく、現代においても姿かたちを変えて我々を常に脅かす存在ですが、彼らは芸術という才能とひたむきな努力、それこそ「芸術以外には何も要らない」くらいの情熱をもって、印象派という芸術史を書き換えた激動の時代をどう生きてきたか、4つのエピソードを通じて様々な視点から描かれています。
決して、「劇的に面白かった」といえる作品ではありませんが、じわじわーっと胸にしみる一冊でした。
ちなみに、わたしは文庫版を読みましたが、Kindleの電子書籍版は作中に登場する作品が収録されているようです。そういった理由から電子書籍版をオススメします。