今でこそあれこれと金融商品に手を出していますが、投資に興味を持ち始めた学生の頃は新聞の経済面を読むのも苦痛なほど、無知で何も知りませんでした。そんなとき、お世話になったのが橘玲氏の著書たち。
「臆病者のための億万長者入門」や「臆病者のための株入門」、「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」を読んだことがありますが、右も左もわからない初心者でも理解できるよう簡潔に書かれており、なおかつ、ストレートな言い回しが好きで非常に読みやすい本だったかと記憶しています。
お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ
そんな著者が書く経済小説「タックスヘイブン」。これは、面白くないわけがない!という期待のもとに手を取りました。
以下、あらすじです。
シンガポールでもっとも成功した日本人金融コンサルタント北川が、ホテルから墜落死した。死んだ北川の妻・紫帆は現地に、高校の同級生・牧島と赴く。
紫帆はそこで北川の現地妻と息子の存在を知る。北川は1000億円を扱うファンドマネージャーだったが、政治家や会社社長など、数々の顧客のプライベートバンクの口座に10億円、50億円規模で穴を開けていた。
背後に見え隠れする、日本の首領が仕組んだブラジルへの原子力発電施設輸出計画とそれを見込んだファンドの失敗。紫帆と大物政治家の過去。大物フィクサーの影と蠢く謎の仕手グループ。そして起こった大物政治家秘書の暗殺。
北川の死は自殺か、それとも殺人か?口座から消えた巨額の資金は、どこへ送られたのか!?
翻訳業で大きな収入は得ていなくても地味で不自由のない生活を送っていた主人公・牧島。金融知識を生かしグレイな世界で生きるダーティーな主人公・古波蔵。有名コンサルトと婚約し瞬く間にセレブ妻となった、ヒロイン的存在・紫帆。
キャラが全く異なるこの3者がうまく交錯し、事件の真相を解決するために東京・大阪・シンガポール・タイ・ミャンマーと目まぐるしくストーリーが展開していきます。
当然、経済小説なのでちょっと難しい専門用語もちらほら出てきます。
「タックスヘイヴン」や「スイス系プライベートバンク」、「マネーロンダリング」に「ODAマネー」、「仕手集団」と金融に興味のない人なら眠たくなるようなキーワードが続出しますが、安心してください。置いてけぼりにならないよう、キチンと解説されており、知識がない方でも楽しめる内容となっております。
また、経済小説特有の堅苦しく無機質なマネーゲームだけではなく、登場人物たちの人間味ある男女関係も描かれており、久々に、寝る間も惜しんで読み終えたエンターテイメント小説です。
金融に興味のない方にも是非読んでもらいたい一冊。