【読書】若い世代に贈る、知の巨人達からの言葉「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」

恥ずかしい話しですが、この本を手に取った時、タイトルだけ見て勝手に「人類史」にまつわるサイエンス本だろうと期待していました。

ところが1ページ目を読んでビックリ、対談本だとは露知らず。著者名を見れば一目瞭然ですが、全く気が付きませんでした。

  

さて、本書は京都産業大学で2016年から行われている特別講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」の第1回から第4回までに登壇したゲスト4名(山中 伸弥氏、羽生 善治氏、是枝 裕和氏、山極 壽一 教授)のトークをまとめた対談本となっています。

京都産業大学 特別対談シリーズ マイ・チャレンジ | 学生生活 | 京都産業大学

 

本の中身に入る前に、この「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」という企画を解説すると、もとは高校生・大学生に向けた講座で、その目的は若い世代に“あんな偉い人でも、なんだ自分と同じじゃないかということを感じとってほしい”とのこと。だから、タイトルに「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」と付けられています。偉人であっても、過去には失敗や挫折を経験してきており、スタート地点は我々と一緒であった。だから、若い世代の方にはこれからどんどんチャレンジしていってほしいという期待が込められた、素晴らしい企画ですね。

 

 

偉人伝、読んだことある? 

冒頭の「はじめに」で本企画のコーディネーターである永田 和宏教授が「最近の若者は偉人伝などを読んだことがない」と書いていましたが、確かに、義務教育を受けていたころに偉人伝などの本を図書館で読んだことがなく、「尊敬する著名人」もいなかったなーと思いました。

「尊敬する人」がいないこと自体はとくに悪いことではないと思いますが、そういった「憧れ」や「羨望」が物事のキッカケとなったり、成長の糧やエネルギーとなったりすることも事実で、心の中に「目標とする人物」を掲げておくことは非常に重要なことだということに気が付かされました。

 

 

彼らが何者でもなかった頃の話し 

4人の対談内容をここで詳しくは書きませんが、企画の目的通り、4人にも駆け出し時代があり、それぞれに苦悩や障害、数えきれないほどの失敗を経験してきたことが対談で明らかにされています。それと同時に、偉人となった今でも、昔のようなハングリー精神を忘れずに持ち合わせており、文面からも4人の熱量がひしひしと伝わってきました。

 

ゲストたちのそういった生きた言葉をとても上手に聞き出してくれているのが、永田 和宏教授。ゲストである4人からアレコレと巧みに、時には面白おかしく話しを聞きだすトーク力は、読者にもその場で講演を聴いているような臨場感を与えてくれます。あまりこういうことは言いませんが、「買って読むべき本の1冊である」とオススメしたい本です。

 

強いて改善点を挙げるとすれば、非常に良書だと思うので、各対談内容をもう少しボリュームあるものにして、ページ数を今の倍くらいにしてほしいと感じました。次巻が出るとすると来年2月頃だと思いますので、期待したいです。

 

 

余談。

特別講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」は今も続いており、次回は2017年7月4日に第7回目が開催予定で、ゲストは皇族である彬子女王殿下だそうです。毎回、ゲストが豪華すぎて、ご近所に住んでいる方がとても羨ましい…。

特別対談シリーズ「マイ・チャレンジ」第7回 彬子女王殿下(本学日本文化研究所専任研究員) | 京都産業大学

 

この記事を書いている時点では、まだ一般申込みを受け付けているので、京都にお住まいの方がいたら、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。京都産業大学はアクセスの悪いところに位置しているので、行くのも大変でしょうが…。